あくる日は、町中の家々が旗を立て、誰もかれもが晴れ着を着ていました。
領主の屋敷の広々とした庭園で、今日の儀式が行われました。
庭の真ん中に、今度町へ送られた鐘が、櫓を組んでつり下げられてあります。
まず牧師さん達が進み出て、新しい鐘を祝福するお祈りを捧げたあと、婚約者達が次々と領主の前へ出て挨拶しました。
それからいよいよ、呼び物の持参金授与式が始まりました。
今日の持参金を目当てに結婚式を繰り上げた者や慌てて婚約をした者もいるのでしょう。
とにかく思ったよりたくさんの若い婚約者達が、列を作っていました。
スワニルダとフランツは昨日のうちに仲直りをしたので、今日の式に間に合いました。
結局あの美しいコッペリアは、ゼンマイ仕掛けの人形にすぎないと分かったのですから、もう問題はありません。
ところがスワニルダが領主の前に進み出て、いましも持参金の包みを受け取ろうとした時後ろの方ががやがやと騒がしくなりました。
人形作りのコッペリウスが、人込みをかき分けて前へ出てきたのです。
「おい、そこの二人、ちょっと待て!」
コッペリウスはえらい剣幕で怒鳴りました。
「貴様、ゆうべの事はやっぱり勘弁するわけにはいかないぞ!勝手に人の家に入り込みやがって……領主に訴えてやるからな!」
と喚きます。
「それから、お前はオレ様が命をかけて作った大切な人形を滅茶苦茶にしてくれたな!さあ、償いをしてもらうぞ!」
何の事だか分からなかったフランツは、もしやと思いスワニルダを見ました。
スワニルダはちょっと視線を逸らします。
「ちょっと、そこの貴方」
朱金の髪の美しい領主が、正面の席から立ち上がって声を掛けました。
「人形作りのコッペリウスよね?一体どうしたの。説明しなさい」
コッペリウスは進み出て、
「実は、これこれしかじかなのだ!」
ゆうべのいきさつを詳しく物語りました。
それは独断と偏見に満ちていた上に、コッペリウスはあの場にスワニルダがいたことを知らなかったので、とても正しいとは言えない話でした。
「ふぅん、そう。なるほどねぇ」
領主が頷いて見せた時、スワニルダが進み出ました。
「領主様、確かにフランツ様は人形を壊したかもしれませんであります」
フランツは何っ!?とスワニルダを見つめましたが、スワニルダはそれを無視して
「ですが、フランツ様の罪は小生の罪。償いをいたしますであります。小生にくださるはずの持参金を、コッペリウスさんへの償いにさせていただけませんでありましょうか?」
と申しました。
おいおいそれは違うだろうとフランツは内心思いましたが、言い出すきっかけがないまま話は進んでいきます。
「それは殊勝な心がけね」
領主はにっこりと微笑み、
「でも、貴女の良い心がけに免じて、コッペリウスへの償いは私が出してあげましょう。ほら、人形作りにそれだけのお金を渡してあげなさい」
と家来に命じました。
お金の袋を受け取ったコッペリウスは足りないぞ!とか騒いでおりましたが、村長の手の者によって外に放り出され口の中でぶつぶつとフランツを罵りながら帰っていきました。
スワニルダもちゃんと持参金が貰えたので、大喜びでした。
唯一フランツだけはまだ納得いかない表情をしていましたが、あっけなく無視されてしまいます。
式が終わると「時」にちなんだ踊りが次々と披露され、その後で若い少年が初めて新しい鐘を打ち鳴らしました。
美しい鐘の音は、その平和な響きを町の隅々まで伝えます。
最後にスワニルダとフランツが楽しそうに踊りました。
町の人々は、二人の幸せを祝福してさかんな拍手を送るのでした。