ある日、近藤さんが酷く落ち込んでいたので仕方なくどうしたのかと声を掛けた。
本当は聞きたくなかったのだが。最近近藤さんが話す内容はだいたいお決まりだからだ。

「実は今日の昼にお妙さんがな…」

その切り出し方で内心ため息を吐きたくなった。
やはりいつも通りか。この人も懲りない。
いい加減諦めた方が良いのではないかと俺は常々思っているのだが、何故か今回は今までよりしつこい気がする。
一体あの暴力娘のどこがそんなに気に入ったのだか。
そんな考えを態度に出さない様に気を付けつつ、無言で先を促す。

「言ってたんだ。
『私は何時死ぬか分からない人を好きになりたくはありません』
ってな」

「そ、れは…」

いつになく真剣な対応だが、それだけに厳しい。
俺達真選組は常に死と隣り合わせだ。
どんなに望まれても、正直な近藤さんは自分は死なないとは言えないだろう。
おそらく、それを分かっていての発言だ。もう自分に構うな、という。
どういう反応を返せばいいのか分からず、煙草をゆっくりと吸って、吐いた。
脳裏に少女の姿を描く。
しかし、好きになりたくはない、か。
好きにならない、じゃない辺りがらしいと思った。
ならない、と言い切られていたなら、近藤さんは「好きにさせてみせます」とでも言ったはずだ。
けれどなりたくない、と言っているものは無理強い出来ない。それでは彼女の意思を軽んずる事に繋がりかねない。
未だ残っている武士の娘としての矜持と、普通の少女らしい願い。
そんなものが垣間見えた気がした。
いつも笑顔で武装しているあの少女も、まだ18歳なのだ。
本来ならば誰かに頼っても良い年頃なのに、境遇がそれを許さなかった。
多分、そこら辺が近藤さんの琴線に触れたのだろうとは思う。
近藤さんは優しすぎる人だから。
きっと彼女もそれは分かっている。けれど、だからこそ。受け入れられない事もある。

ああ、少しだけ、自分と彼女は似ているかもしれない、と思った。

 

 

 

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