「あの、困ります」
「そんな事言わずにさぁ」
「ちょっとだけだから」
朱色の髪の女性が、二人の男に言い寄られている。昼間の公園にしては珍しい光景だった。
長い朱色の髪は、魔力の証である。二人の男の方もさして長くはないものの、普通の人よりは長い髪だ。
「人を待っているんです」
「だって、来ないじゃん」
困った様子の女性はふと視線を巡らせ、
「サラ!」
その人の姿を見た瞬間、嬉しそうに微笑んだ。
呼ばれた青年も女性──エセルに駆け寄る。二人の男など歯牙にもかけない様子だ。
やや細面だが、整った顔立ちの男性である。すらりとした体躯の持ち主だ。
軽く束ねた薄い金色の髪が、彼も相当な魔力の持ち主だと示している。
「エセル、待った?」
「いいえ、今来たところよ」
蕩ける様な極上の笑みを浮かべて青年を見上げた。
その笑顔に、つられてサラもうっとりするような笑顔を見せる。
どこからどう見てもお似合いのカップルだった。
公園でエセルに声をかけていた男達も、サラに目を奪われていた女性達も、一発で諦めるような二人連れだ。
それで、とサラが視線を男達に向ける。
「俺の連れに何か用でも?」
二人は口の中でもごもごと何かを言っていたものの、サラの威圧に負けてあっさりと去っていった。
「さあ、行こうか」
エセルに対しては優しく言うと、寄り添うようにした彼女が小さく「ありがとう」と呟く。
「礼を言われる事じゃないだろう」
「でも、嬉しかったの」
「…という事になっていただろうから、サラさんは女性で良かったと思うよ」
そうなっていたら君には絶対勝ち目がなかっただろうしね。
黒髪の賢者が言い切る。ラーイは呆れたようにセイクリードを見た。
「つーか、その発想どこから沸いてきたんですか、フレイさん」
「あの二人を見ていると僕は結構そんな事を考えてしまうけどな」
二人の視線の先には先刻まで話題に上っていた二人の女性。
確かにサラはエセルを守る騎士のようだ。女性である今のままでも十分に。
そしてエセルも彼女に守られる事を容認している。エセルの隣にいつでもいられるのは、サラだけなのだ。
「今のままでも君には勝算がないけどね」
余計な事を言う水の賢者をにらみつけてから、ラーイは二人に向かって歩き出した。